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Writer's pictureとおやま犬猫病院

顔が大きい猫は心臓病になりやすい?


こんにちは。とおやま犬猫病院の院長、遠山伸夫です。

今回は、猫ちゃんの心臓病について興味深い獣医学論文の内容をもとにお話していきます。

タイトルにあるように、

顔(正確には顔の幅)が大きい猫ちゃんは心臓の筋肉が厚くなりやすいという、

なんとも冗談のような驚くべき研究結果が2015年に発表されました。

J Vet Intern Med は、獣医内科学で最も信頼できる学術雑誌のひとつです。

猫ちゃんには、心臓の筋肉が厚くなってしまい、

血液を全身に送り出すポンプ機能が低下してしまう「肥大型心筋症」という心臓病があります。

この心臓病の怖いところは、今まで何の症状もなかった猫ちゃんが、

急に後ろ足がマヒしてものすごい痛みを訴えたり、

呼吸が苦しくなって、急死してしまうことがあることです。

メイン・クーンやラグドール、アメリカンショートヘアという

純血種の猫ちゃんを飼っている飼い主さんであれば、

この肥大型心筋症になりやすいということで、この病気名を聞いたことがあるかもしれません。

上に挙げた純血種の猫ちゃんは、他のネコ種と比べると顔が大きい傾向があるため、

紹介した論文内容も頷けます。

では、あなたの猫ちゃんがこの肥大型心筋症かどうか、実際にどうやって調べればいいでしょうか?

「心臓の病気なら胸のレントゲンを撮ればいいんじゃない?」

そう思ったあなたは素晴らしいです。

確かに猫ちゃんの胸のレントゲンを撮ることにより、

肥大型心筋症であった場合、ハート型に心臓の影が大きくなっている(通称:バレンタインハート)ことがあるので、診断に有効です。

しかし、この心臓病はレントゲンで心臓の影が大きくなくても、

実は否定することはできません。

なぜかというと、以下の図1・図2の心臓のイメージで説明がつきます。

図1

この図1は、心臓を簡略化したものなんですが、

①正常の心臓、②拡張した心臓、③肥大した心臓を表しています。

オレンジ色の部分が心臓の筋肉、いわゆる心筋部分で、

赤色の部分は血液が充満している心臓の中身の部分となります。

では問題です。

一番大きい心臓はどれでしょうか?

これは誰でもわかると思いますが、②の拡張した心臓です。

心臓の中身が血液でいっぱいになっており、心臓全体が大きくなっています。

では、猫ちゃんの肥大型心筋症はどのタイプに当てはるかというと、

ほとんどは③の肥大した心臓になります。

③の肥大した心臓は、①正常の心臓と大きさは一緒ですが、れっきとした違いがあります。

その違いとは、オレンジ色で表した心臓の筋肉部分の厚みが違います。

③の肥大した心臓は筋肉部分が厚く、心臓の中身が狭くなっているのがわかると思います。

ここで、胸のレントゲンに話を戻しましょう。

心臓の影が大きくなくても、心臓の筋肉だけが厚くなっていた場合、

レントゲンではどのようにみえるのでしょうか?

図2は、図1の①〜③の心臓をシャッフルしてレントゲン撮影したら、

どう見えるかを表しています。

図2

さて、先ほどと同じ質問をします。

一番大きな心臓の影はどれでしょうか?

これは一目瞭然ですね、答えは②です。

では、心臓の筋肉部分が厚いのは、どれでしょうか?

①か③のどちらかということはわかりますが、

どちらが正常の心臓で、どちらが心臓の筋肉が厚い心臓かは判別不能です。

これが、猫ちゃんの心臓の筋肉が厚くなった「肥大型心筋症」を、

レントゲンだけでは確実に診断ができない理由です。

仮にかかりつけの先生に、

レントゲン撮影だけで心筋症ではないですよと言われたら、

本当にそうなんですか?と質問してみて下さい。

現在の獣医学で、猫ちゃんの心臓病の大半を占める心筋症という病気を

猫ちゃんへの負担が少なく、そしていち早く検出できるのは心臓のエコー検査と言われています。

もし、心臓のエコー検査を提案されなければ、

その先生は心臓病が苦手か、心臓のエコー検査がうまくできない可能性があるので、

セカンドオピニオンをオススメします。

心臓エコー検査について詳しく書いていくと長くなってしまうので、

今回はこれまでとしますが、獣医師なら誰でもできる検査ではないので要注意を。

次回は猫ちゃんの心臓エコー検査について、わかりやすく解説していこうと思います。

P.S. 

あなたの猫ちゃんの心臓がどんな風になっているかご心配な方は、

当院まですぐにご相談下さい。

大学病院で心筋症の猫ちゃんのエコー検査を行ってきた経験を活かし、

猫ちゃんの負担を最小限にし、正確な診断を行っていきます

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